なぜ、あなたの実績は「スタートアップ面接」で響かないのか?
大手企業で10年以上のキャリアを築いてきたあなた。安定した給与と肩書きがある一方で、心の奥底では「もっと裁量のある環境で、ゼロからイチを創りたい」という想いが燻っているのではないでしょうか。
しかし、いざスタートアップの面接に臨むと、こんな壁に直面します。
- 「これまでの実績を熱く語ったのに、面接官の反応が薄い…」
- 「『なぜうちなのか?』と聞かれて、言葉に詰まってしまった」
- 「安定志向だと思われて、落とされているのでは…」
実は、これはあなたのキャリアが低いからではありません。 大企業での成功体験を「スタートアップの文脈に翻訳できていない」だけなのです。
この記事では、実際に大手IT企業からスタートアップCOOに転身した筆者が、自らの失敗と成功を赤裸々に綴りながら、「面接官が本当に知りたいこと」に答える3つの質問フレームワークをお伝えします。
(注:本記事は筆者の個人的経験に基づくものであり、転職の成功を保証するものではありません。重要なキャリア決定の際は、キャリアコンサルタント等の専門家にご相談ください)
【実体験】私が5社連続で落ちた、苦い失敗談
面接1回目:「実績の羅列」が裏目に出た日
2019年、当時35歳だった私は、大手SI企業でプロジェクトマネージャーとして年収800万円、部下15名を抱えていました。しかし、決められた仕様を決められた予算で納める日々に、次第に虚しさを感じるように。
転機は、大学時代の友人が創業したHRテックスタートアップが、シリーズAで5億円を調達したニュースでした。「俺も、あの熱量の中で働きたい」—そう思い、即座にWantedlyで20社に応募しました。
最初の面接は、従業員30名のSaaS系スタートアップ。意気揚々と「私は○○銀行の基幹システム刷新(予算12億円)を2年でやり遂げました!」と語りました。
面接官(CTO)の反応:「…それは素晴らしいですね。で、うちの月間売上200万円のプロダクトに、その経験はどう活きますか?」
私は、答えられませんでした。 頭が真っ白になり、「え、あの…マネジメント経験が…」と口ごもるだけ。面接は30分で終了。お祈りメールは翌日に届きました。
【心の声】 「何がダメだったんだ…大手では評価されてきたのに。スタートアップでは、俺の経験は無価値なのか?」
面接2〜5回目:「なぜうち?」の”呪い”
次の4社も、似たような失敗の連続でした。
面接官: 「なぜ、うちを志望したんですか?」
私: 「御社の成長性とミッションに共感しまして…」
面接官: 「具体的には? 当社の今のフェーズで、何が課題だと思いますか?」
私: 「…すみません、勉強不足で…」
恥ずかしながら、私は各社のプロダクトを「さらっと」見ただけで、ユーザーレビュー、競合分析、資金調達履歴、採用ページの役員コメントなど、「その会社の現在地と本音」を全く調べていなかったのです。
5社目の最終面接では、CEO自らが出てきました。
CEO: 「大企業では、失敗しても会社は潰れませんよね。でもうちは、あなたの判断ミス一つで全員が路頭に迷う。その覚悟、ありますか?」
私は、凍りつきました。「俺は、安定を捨てられないのかもしれない…」—その瞬間、自分が「スタートアップごっこ」をしていたことを悟りました。
【転機】ある採用コンサルタントの言葉が、すべてを変えた
5社連続落ち、3ヶ月間の無意味な消耗。私は、プロのキャリアコンサルタント(リクルートキャリア出身)に相談しました。
コンサルタント: 「あなたは、”What I did(何をやったか)”しか語っていません。スタートアップが知りたいのは、”What I can do for YOU(あなたの会社に何ができるか)”です。大企業での経験を、スタートアップの”未完成な現在”に翻訳してください」
この言葉が、私の面接戦略を180度変えました。
【解決策】スタートアップ面接を突破する「貢献の翻訳」3ステップ
ここからは、私が実際に使って3社から内定を獲得した具体的フレームワークを公開します。
ステップ1:「企業のフェーズ」を5分で見抜く質問リスト
スタートアップは、フェーズによって求める人材が180度変わります。以下のチェックリストで、企業の「今」を見極めましょう。
【調査項目チェックリスト】 (面接前に必ず確認)
| 項目 | 調べ方 | 判断基準 |
|---|---|---|
| 資金調達段階 | INITIAL, STARTUP DB | シード→PMF模索 / シリーズA→成長加速 / シリーズB以降→組織整備 |
| 従業員数 | Wantedly, 採用ページ | 10名以下→全員プレイヤー / 30〜100名→マネージャー必要 / 100名超→大企業的 |
| 直近の採用職種 | 求人票 | エンジニア偏重→プロダクト重視 / ビズサイド増→市場開拓期 |
| ユーザーレビュー | App Store, G2 | 低評価の内容→解決すべき課題が見える |
| CEO/CTOの発信 | X, note | 悩みや方向性が赤裸々に書いてある |
【私の実例】
6社目に応募した物流SaaSスタートアップ。従業員45名、シリーズA直後。採用ページで「カスタマーサクセス急募」の文字を発見。App Storeレビューでは「導入後のサポートが手薄」という声が散見されました。
→ 仮説: 「プロダクトは良いが、顧客のオンボーディングとリテンションに課題がある。CSチームの体制構築が急務では?」
この仮説を携えて面接に臨んだところ、面接官(COO)の目の色が変わりました。
ステップ2:「あなたの経験」を”スタートアップ語”に翻訳する
大企業での実績を、そのまま語ってはいけません。以下の3つの質問で、経験を「翻訳」しましょう。
質問1:「その経験で、何が”本質的に”できるようになったか?」
NG例: 「私は100名のプロジェクトをマネジメントしました」
OK例: 「私は、利害関係者が20社以上いる複雑な環境で、合意形成しながらゴールに導く力を身につけました」
→ スタートアップでは「100名のチーム」はないが、「複雑な利害調整」は毎日発生する。
質問2:「その成果は、”制約がある中”でも再現できるか?」
NG例: 「潤沢な予算で最新ツールを導入し、効率化しました」
OK例: 「予算ゼロの状況下、Google Workspaceの無料機能だけでワークフローを自動化し、月40時間の工数削減を実現しました」
→ スタートアップは常にリソース不足。「工夫力」こそ価値。
質問3:「その経験を、”この会社の今のフェーズ”でどう活かすか?」
NG例: 「私のリーダーシップで、チームを成長させます」
OK例: 「御社の現フェーズ(シリーズA直後)では、CSチームの”型”がまだない状態と推察します。私は前職で、ゼロからカスタマーサポートのSOP(標準作業手順書)を作り、対応時間を50%削減しました。同じアプローチで、御社のCS業務を”属人化から脱却”させ、スケーラブルな体制を3ヶ月で構築できます」
→ 具体的な”納期”と”成果物”まで提示することで、信頼性が爆上がりします。
【私の実例】
物流SaaSスタートアップの面接で、私はこう語りました。
「前職では、大規模システム導入時に、現場の抵抗で進捗が止まる事態を何度も経験しました。その度に、私は”現場の声を聞くワークショップ”を開催し、不安を可視化→解決策を共創→段階的導入、というプロセスで合意形成してきました。
御社のApp Storeレビューを拝見すると、『使いこなせない』という声が目立ちます。これは、プロダクトの問題ではなく、オンボーディング設計の課題では? 私なら、ユーザーインタビューを10社実施→つまずきポイントを特定→動画チュートリアル&FAQ整備、を1ヶ月で回し、NPS(顧客推奨度)を20ポイント改善する自信があります」
面接官(COO)の反応:「…今すぐ来てほしい(笑)。まさに、それをやってくれる人を探していたんです」
ステップ3:「覚悟」を”行動”で証明する
スタートアップが最も恐れるのは、「安定志向の人が、カルチャーショックで辞める」こと。言葉ではなく、行動で覚悟を示しましょう。
証明方法1:「副業・個人プロジェクト」を見せる
面接前に、以下のいずれかを実行:
- 応募先プロダクトを実際に使い、改善案をnoteで発信(URLを履歴書に記載)
- 関連領域で小さく起業(ココナラでコンサル販売など)
- OSSへのコントリビュート、技術ブログ執筆
私の実例: 物流SaaSのユーザーとして試用し、「ドライバー目線で使いにくい点5つ&改善UI案」をFigmaでモックアップ作成→面接時にプレゼン。「ここまでやる人、初めてです」と驚かれました。
証明方法2:「年収ダウンOK」を明言する
NG: 「前職と同等の年収を希望します」
OK: 「短期的な年収より、事業成長への貢献とストックオプションに期待しています。前職比30%ダウンでも問題ありません」
(注:ただし、生活に支障が出るレベルの減額は避けましょう。事前にFPに相談推奨)
証明方法3:「1ヶ月の”お試し期間”」を提案する
私の提案例:
「もし不安があれば、最初の1ヶ月を”業務委託(週3日)”で試していただけませんか? 成果を見て、双方納得の上で正社員化という形でも構いません」
→ 企業側のリスクを下げつつ、あなたの本気度を示せます。
【成功事例】この戦略で、3社から内定を獲得
上記の3ステップを実践した結果、私は以下の3社から内定を得ました。
- 物流SaaSスタートアップ(従業員45名) – COOポジション、年収650万円+SO 0.5%
- HRテックスタートアップ(従業員80名) – PMポジション、年収700万円+SO 0.3%
- EdTechスタートアップ(従業員15名) – 事業責任者、年収550万円+SO 1.2%
最終的に、私は1社目(物流SaaS)を選択。現在、入社2年でチームを5名→20名に拡大し、NPS +35ポイント達成。シリーズBの資金調達(15億円)にも貢献しました。
年収は前職比-150万円でしたが、裁量と成長実感は10倍。 毎朝、「今日は何を壊して、何を創ろう?」とワクワクしながら出社しています。
まとめ:「翻訳力」が、あなたの市場価値を10倍にする
大企業での経験は、決して無駄ではありません。ただし、スタートアップ面接では「同じ言語で語らない」だけで、あなたの価値は伝わりません。
今日から実践できる3ステップ:
- 企業のフェーズを5分で見抜く(調査チェックリスト使用)
- 経験を”スタートアップ語”に翻訳(3つの質問で再定義)
- 覚悟を”行動”で証明(副業、年収交渉、お試し提案)
この記事を読んだあなたが、次の面接で「この人と働きたい!」と言われる日を、心から願っています。
